強襲
 リサが気付いた時には遅かった。深夜、廃虚と化したビル街で怪物騒ぎの調査中だったのだが、すでに三羽の巨大カラスに囲まれていた。
「まずい!」
 リサが狼化する間も与えさせず、カラス達は一斉に襲い掛かってきた。図体がでかい割に動きが俊敏だ。必死にかわすリサだが、腕や背中を見る見る引き裂かれて行く。
「がはあ!」
 二羽の陰に隠れて猛スピードで突っ込んで来たカラスの嘴が、リサの胸を貫いた。


沈黙

「ぐふ・・・」
 吐血とともに力を無くし、膝をつくリサ。
赤く血に染まった嘴がゆっくり引き抜かれると、リサは人形のように崩れ落ちた。

 そしてリサの胸を中心にして、血溜まりは徐々にその面積を拡大していった。


覚醒

 リサは死んだのか?

 否、彼女は生きていた。狼女たるもの、心臓を貫いたぐらいでは死なないのだ。それはカラス達も分かっているようだ。先制攻撃で少しでもダメージを与えておきたかったのだろう。

 リサはただならぬ妖気を発し、首を擡げた。


咆哮

「オオーーーーーン」

 耳を塞ぎたくなるようなけたたましい咆哮。そこには巨大な人狼がいた。

 それは、まさしくリサの変身した姿だ。まだカラス達につけられた傷は癒えていない。しかし、手負いの獣ほど手に負えないものはないのだ。



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